コラム

2018.11.12

家紋異国~世界における家紋文化の特異性~


日本文化の多くは中国から輸入されたものが多く、家紋のモチーフになっている唐花や牡丹などの文様も中国文化が元になっています。しかし、家ごとに紋章を定める「家紋」に関しては、中国では見当たらず、日本独自に発展した文化といえます。中国では王朝の誕生と滅亡が繰り返されたことや、古来より科挙制度とよばれる能力主義が採用されたことによって、数百年の歴史をもつ「家」=貴族が存在しなかったために、家紋文化が生まれなかったといわれています。

家紋に似た文化としては、ヨーロッパの紋章文化があります。紋章についての定義は諸説ありますが、最低限の要件として、①個人を識別できるように、全く同じ図案の紋章が同時期の同一主権領内に二つ以上あってはならない、②代々継承された実績を持つ世襲的なものである、という二つが定義されています。

日本の家紋との一番の違いは、「家」を表す紋章ではなく、「個人」を示す紋章として発展したところです。もちろん個人の紋章であったとしても、それらが子孫に伝えられることで、ハプスブルク家の「双頭の鷲」のように「家」として有名な紋章も存在します。

またヨーロッパの紋章文化は、あくまでも貴族が主体であり、家紋のように各家庭にまで紋章が普及していることはありません。あわせて紋章の使用については、中世より厳格に管理・統括されており、現在もその歴史は続いています。

近年は家紋が持つ歴史や、そのデザイン性の高さが海外で非常に高く評価されており、英語では、カモン(Kamon)とも呼ばれています。

家紋が改めて注目されている今こそ、海外に向けた発信が必要なのかもしれません。

家紋研究家・森本勇矢

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